失敗は投資成功の母。
「投資は怖い」
ネットでよく目にする言葉です。100万や200万円でもさることながら、投資で1000万円や2000万円の大損をしてしまうような失敗は確かにゾクッとするもの。考えられない借金を背負うような失敗は確かに怖いですよね。
でも皆さんこう思うんです。
「私はそんな大金を投資しないから大丈夫」
しかし投資の怖いところは、大きな失敗をするような投資を自分自身でいくら気を付けていてもしてしまうところにあります。これは小さな成功が大きな成功への欲望を駆り立て、さらなる大きな失敗に対する恐怖心を麻痺させてしまうからなのでしょう。
でも投資は怖い、投資で失敗したくないという人も、失敗する理由をしっかり把握しておけばそうそう大きな失敗はしないのです。
今回は投資の失敗談をもとに、投資で失敗する理由や、投資を成功させるポイントなどについて見ていくことにしましょう。
大損談。株式で自己破産。「メシウマ・・・ではない」
ここでは投資失敗談の中でも特に損失額が大きくなりがちな株と不動産投資の失敗談を紹介していきます。
まずは株の投資失敗談から見ていきましょう。
茂地株大治(もちかぶ だいじ)さん / 仮名・35歳のケース
茂地株さん(仮名)は社会人13年目のサラリーマン。2000年代より銀座をはじめとする都心部へ次々と進出する外資系ホテルチェーンへフロントとして入社。茂地株さんが34歳の時に新入社員のウェイトレス川瀬さん(仮名)と入籍しました。理由はおめでた婚。
これまで貯めた貯金額はわずか50万円。会社員としても給料は決して高くはないため、経済的に大きな不安を感じています。これからかかってくる育児費用や出産費用に100万円は必要ですし、できれば結婚式も両親や川瀬さんのために挙げたいと思っているものの、最低でも100万円以上かかることがわかりました。
とにかく生まれてくる子供のためにもお金が必要な茂地株さんですが、就業規則に禁止されている副業を始めようにも、ホテルのフロントでは16時間勤務のシフトのこともあり、不規則な勤務時間の自分が働ける良い副業は見つかりませんでした。
そこで茂地株さんは株とFXを開始。入社後3カ月で英語を習得し、芸能人や海外の有名人を相手にフロント業務を堂々とこなしてきた経験から、投資も失敗せずにできるという自信がありました。
元手50万円で株の投資を開始
計算上手な茂地株さんはまず、元手の50万円のうち10万円以下で買える株に目をつけ10万円のみを動かすことから始めます。元手1/5の割合である10万円しか投資に回さなかった理由は、失敗をして全財産を失うわけにはいかないという思いからでした。
数ある優良銘柄の中から優良株をしっかり見抜き、4ヵ月かけて10万円を複利運用し、倍の20万円にすることができました。はじめての投資で失敗することなく、わずか4ヵ月で元手を2倍にしたのです。
増やした10万円を元手の50万円に足すと資金は60万円に増えましたので、次の4ヵ月では失敗を恐れず、この60万円すべてを運用し、さらに3倍のレバレッジで投資をしようと決心します。
茂地株さんはこの4ヵ月で元手を2倍にしているので、これに3倍のレバレッジを掛け、失敗をせず運用できれば元手を6倍にすることができるはず、という目論見を立てました。
60万円の資金を投資に回すことで、4ヵ月には資金は360万円になる計算で、結婚式や出産育児の費用を賄えると茂地株さんは考えます。それどころか、投資に成功することができれば今の会社をやめ、賃貸のワンルームを引っ越し、一戸建てを購入すること、さらにはハワイでワインを飲みながら暮らすことも夢ではない!とまで考えます。その上ITベンチャー企業を立ち上げ、お金は投資信託にでも預ければいいなどと妄想はとどまることを知らず広がっていきます。
この頃はまだ投資で失敗することなど夢にも思っていなかったのです。
資金は290万円に達するが・・・
その後290万円まで資金が順調に増えていき、投資は成功したように見えましたが、信用の高かった銘柄のひとつが急落しはじめ、資金は160万円まで落ち込みます。急落の理由もはっきりとわからず、特に問題ないと判断、茂地株さんは投資を続けます。
しかしその後もあっという間に株価は下落、290万円もあった資金は元手の60万円をも割りこみ20万円となってしまいました。わずか35分間で資金の90%以上を失ってしまったのです。
20万円では結婚式費用どころではなく出産費用も賄うことができません。少なくとも当初元手として持っていた50万円は戻しておきたいと考えますが、出産まであまり時間もない状態で手持ちの20万円を50万円にするのは副業でアルバイトをしても至難の業。しかし出産には50万円が必要なため、その後も安易に株式投資で大きな利益を狙うことにしました。
しかしこの状態で最善の判断をできるはずもなく、さらに元手は減少し、資金は5万円となってしまいました。
最悪を拒否すると絶望が訪れる
投資に失敗し元手を失った茂地株さんですが、出産費用を直ちに捻出するには借金をするしかありません。しかし、株に失敗し出産費用を失ったという羞恥心から、両親や友人、さらには妻にさえお金を借りなければならない事情を説明できる状況ではありませんでした。
そのため、茂地株さんは誰にも知られずお金を借りられるよう消費者金融からお金を工面するほかないと考えます。消費者金融の高金利を考えると、今後の結婚生活資金がさらに不足することはわかっているため、この最悪な状況を回避する手段は借りたお金でさらなる株の投資を行って利益を出し、借金を一気に返済、少なくとも50万円が手元に残るだろう、茂地株さんはそう考えてしまったようです。
しかし投資で求められるものは冷静な判断力。大きなお金を失い正常に判断できない茂地株さんは、消費者金融から借りた100万円もあっけなく失い、さらに借金を膨らませてしまいます。
こうして茂地株さんは、毎月借金を返していかなければならないという絶望的な状況となってしまいました。
このように正常の判断ができない状態でも投資を続けてしまうというのが、投資で失敗する主な原因のひとつなのです。
絶望を拒否すると地獄が訪れる
茂地株さんはこれだけ大きな失敗をしても絶望的なこの状況を受け入れられませんでした。投資に失敗した事実や消費者金融への借金が明るみに出る羞恥心がこの状況を拒否してしまうのです。
また、少なからず儲けたという経験と、失敗や損失に慣れてしまったことが茂地株さんを絶望から地獄という末路へといざなったのかも知れません。
こうなってしまったら最後、一生働きながら借金を返し続けるか、自己破産の道しか残されていません。
マンション不動産で大損。アベノミクスの好景気≠成功

次は不動産投資の失敗談についてです。
館茂野好美(たてもの このみ)さん / 仮名・29歳のケース
20歳で学生結婚した館茂野さん(仮名)。商社インターン時代に12歳年上の夫の府堂(ふどう)さん(仮名)と知り合い結ばれます。以後専業主婦として夫の府堂さんを支えてきました。
翌年には子供にも恵まれ、大学は中退するものの、経済的に不自由のない生活を送ってきた館茂野さん。家事も器用にこなし、昼間には料理ブログを書きながら楽しく暮らす専業主婦生活でした。
しかし26歳の時、夫の浮気が発覚します。館茂野さんは何とか乗り越えようと努力したものの、どうしても受け入れられず、28歳の時に、7歳になる息子の邦夢(ほうむ)くん(仮名)を引き連れて離婚を決心しました。
館茂野さんは慰謝料に加え、子供が成人を迎えるまで月6万円の養育費を受け取ることができることとなりましたが、館茂野さん自身が働かなければいずれ首が回らなくなることは明白でした。
しかし大学を中退した館茂野さんが働ける職場は時給の安いアルバイトやパートなどに限られます。一度は大手商社のインターンまで務めた館茂野さんでしたので、給料の安いパートを一生続けていくことや生活保護の受給、実家へ戻るという選択はどうも性に合わないと考えます。しかしこれが失敗の始まりでした。
しばらくして商社インターンの時代の先輩である積水(せきすい)さん(仮名)より不動産投資ビジネスに誘われます。
不動産なら専業主婦をしながら投資できる
館茂野さんは、元夫から受け取った慰謝料を頭金として、4400万円のローンを組み不動産投資デビューを果たします。館茂野さんが購入した物件は東京23区内、駅から少し離れた住宅地にある部屋数7戸の古いアパートで、利回りは12%というものでした。
毎月13万円のローンを返済しても44万円の家賃収入が望めるため、キャッシュフローはなんと29万円。働かずして毎月29万円の収入が手に入るというのは専業主婦として生きていきたい館茂野さんにとってとても魅力的でした。
毎月29万円。キャッシュフローの威力
館茂野さんの所有物件は多少割高なものの、全室入居状態の物件を購入しており、母子手当は無くなったものの、物件を所有した月から42万円(管理費2万円差し引き)もの家賃収入が入り、館茂野さんは不動産投資に成功を実感しながら喜びました。
毎月ローンの13万円を返済に充て、賃貸物件経営によるキャッシュフローは27万円(管理費2万円差し引き)。その収入に加えて元夫からの6万円の養育費を足すと月の収入は33万円となりました。33万円のお金を管理するのは館茂野さんにとってはじめてのこと。贅沢はできないとはいっても母子2人が生活していくには足る収入ということもあり、不動産投資を始めた当初に抱えていた心配は見事に消えていったのです。
7部屋のうちの3部屋が突然引っ越し。なぜ・・・
しかし不動産経営をはじめて3か月経ったある日、管理会社より3部屋の住人が引っ越すとの連絡を受けました。3部屋分の収入がなくなるということは家賃収入44万円のうち18万円が減少することになります。さらに新しい入居者を見つけるためには入居者募集の告知をしていかなければなりません。その結果、入居者が決まったら不動産業者に広告費も支払わないといけないとのこと。
さらにこの月は、残った4部屋のうち2部屋から雨漏りがするという連絡を受けたのです。その修理代はなんと70万円!とはいえ館茂野さん、今は支出がかさんでも、家賃収入ですぐにチャラになると考えます。
その後半年経って新たに1人入居しましたものの、さらにもう1人出て行ってしまいました。税金の支払いに加え、管理費や修繕費など、もろもろ引くと手元に残る金額はほとんどなし。
さらには入居者が入らないことが災いし、館茂野さん所有物件の市場価格は購入時の1000万円以上も安くなってしまいました。
失敗の裏の3人の退居者
入居者が多いという理由で物件の価格が高くなるというのは普通のことです。しかし館茂野さんはそれを知りませんでした。
実は、この物件を館茂野さんに売る前のオーナーと退居していった入居者たちは裏でつながっており、物件の値段を吊り上げるために、オーナーが知り合いに数カ月の間入居してもらっていただけだったのです。
そんなこともつゆ知らず、館茂野さんは最大家賃収入44万円を期待しながら粘り強く物件を持ち続けましたが、収入改善は見られず修繕費等で大きな出費がかかるのみ。とうとう耐えられなくなり売却するも、1000万円以上の借金を負うことになったのでした。
投資の失敗理由はみな一緒
茂地株さんや館茂野さんは、なぜ投資に失敗したのでしょう。
それは
- 見切りが遅い
- 最悪の事態を想定していない
- 失ってはいけないお金を投資している
といった3つのポイントが欠落していることが原因と言われています。
見切りが遅い
茂地株さんや館茂野さんの両方に共通して言えることは、いずれも損失が膨らんでいくのをただ指をくわえて見ているだけという姿勢です。
人間の心理として、利益も損失も大きくなるほど価値の評価力が鈍化するという特徴があります。つまり、少し稼ぐことができれば「もっと多く稼ぎたい」と思いますし、多少損しても「これくらい大したことはない」と思ってしまうのです。そのため、借金が500万円だろうが1000万円だろうが大して変わらないと感じてしまいます。このような心理が投資による失敗を引き起こす大きな原因となっています。
最悪の事態を想定していない
次に2人とも、最悪の事態(大きな失敗)を想定していないということです。
突然ですが質問です。
投資において最高の事態と最悪の事態はどちらが先に来るでしょうか?
答えは「最悪の事態」の方が先に来ます。その理由は、投資の儲けには上限がないのに対し、損失には限界があるから。稼げるならいくらまででも稼いで良いでしょうが、借金できるからといっていくらでも借金できるわけではありません。
取り返しのつかない失敗や借金があるということは、ある意味無一文で家のない人間よりもお金がないということ。こうなると返済に手いっぱいで、働いてもお金が増えるということがありません。
使ってはいけないお金に手を付けてしまうことは絶対に避けなければなりません。
失ってはいけないお金を投資している
最後ですが、投資をするときは、投資をして失敗することを想定する必要があります。
投資の失敗を受け入れる準備ができていない人だけが、最悪の事態を拒否し地獄へとはまっていきます。投資は必ず失敗とセットであり得ると理解しておきましょう。必ず成功させるという気持ちと同時に、失えないお金は絶対に投資しないという自制心こそが、投資を成功させるためのルールだと言えます。
成功例の王道はひとつ。初心者脱却が成功のカギ
ここまで投資に失敗してしまう人の共通点をお話してきましたが、ここからは投資を成功させるためのポイントについてお話していきたいと思います。
投資を成功させるための王道、それは
「初心者からの脱却」「失敗の回避」「専門知識を身に付けた投資の上級者になること」です。
これについてもう少し詳しく話してみましょう。
投資を失敗しない上級者となる手順
フェーズは以下の3つとなります。
- 初心者からの脱却
- 失敗を回避
- 専門知識を身に付けた投資の上級者になること
初心者からの脱却する
投資で成功するための第一歩は初心者を脱却することです。
投資において失敗した!と認識できるのはある意味中級者レベルの人で、投資の初心者はなぜ失敗したのかすら分からないものです。そのため初心者は定石を覚えるためにも、まずは失敗する場合のパターンを覚えるため、時間をかけて経験を積まなければなりません。
初心者に失敗はつきものです。投資初心者がまず心がけることは、とにかく小さなお金で始めること。1万円を1万2000円にできない人は、100万円を120万円にできないと言います。当然、本気で資金を増やそうと思う必要がありますが、失敗して資金を失っても貴重な勉強ができたと思うくらいの気構えは持っておきましょう。
失敗の回避
投資の失敗を回避するためには、なぜ失敗するかを理解している必要があります。投資理論をある程度頭で理解していたとしても、思うように投資をコントロールするのはなかなか難しいもの。
何度も失敗する中で投資経験が蓄積されると、投資を行う前にだんだんと投資のゴールや損失の最大値、成功の確率などがなんとなく算出されるようになります。
投資の失敗をすべて回避するというのはほぼ不可能です。しかし、本当にしてはいけない失敗をしなくなるだけでかなり収益率はあがるはず。判断力と危機回避能力を養うことを目指しましょう。
専門知識を身に付けた投資の上級者になること
投資の上級者が手に入れるものは安定です。上級者になれば過度の成功体験や失敗経験に惑わされず、自己の選択を後悔することなく淡々と利益が長期的に最大化できる選択をし続けることができます。
また、豊富な専門知識や培ってきた実績によって他者から信頼されることも多く、にわかには得がたい有益な情報を素早く入手できる人脈が育っているものです。
投資の上級者になることはとても大変ですが、最も必要なのは、やはり優れた投資家としっかり交流できるようになることです。
まとめ。運用はとにかくじっくり「老後、退職金」
まとめとなりますが、投資で失敗をしないためにはとにかく気長に考えるということです。
投資で安全に資金を運用するならとにかく時間がかかるということを覚えておくと良いでしょう。逆で考えると、時間をかけずに儲けようとする投資はとにかく失敗の危険があるということ。
投資を失敗せず安全に行うなら、キーワードは「老後の退職金」です。
キーワード「老後の退職金」
これはどういう意味かといいますと、投資の最終的な目標を「老後を迎えるまでいくらにお金を増やせるか」ということに置きましょうという意味です。老後の退職金を自分で作るというコンセプトですね。
投資を安全に行うためには、気長な忍耐心を持つ必要があるという心です。投資家の使命はとにかく失敗しない、資産を失わないことにあります。
また、投資は時間がかかりますし、失敗がつきものです。だからというわけではありませんが、なるべく若い頃から投資を始めることをお勧めします。